この映画、観ました?#25「どですかでん」

    こんにちは。大石ちゃんこです。


    今回は、中学の時に見て以来

    大のお気に入りの黒澤映画です。監督初のカラー作品とのこと。

     

    この映画、観ました?

     

    黒澤明 監督  「どですかでん」


    ★★★★☆ 4点

    <ストーリー>

    空想の電車を走らせる知恵遅れの六ちゃんを狂言回しに、奇妙な集落に住む様々な人々のエピソードが連ねられていく

    ヒューマン群衆劇。

     

    初めてこの作品を見たのは中学生時代。

    地元・静岡の清水中央図書館にレーザーディスクで映画を見られるコーナーがあり、LDを物色したらジャケットが目に入って

    無性に見てみたくなったのです。


    ジャケットの人物は、六ちゃんという電車バカの中学生(知的障がい者)なのですが、

    この絶妙な顔や背格好、演技など、本当に最高の配役だと思いました。


    見えない身支度を整えて、見えない電車の点検をして、見えない整備士の仕事ぶりを怒り、

    「どですかでん」と走行音を口にしながら見えない線路を1日中運転している彼は、すごく楽しそうだし、

    小汚ないのに美しく見えます。

     

    映画に詳しくない私は、黒澤明って侍とか刀とかが出てくる作品のイメージしかなかったので驚きましたが、

    その後、何度も図書館でLDを見たほど気に入ったのでした。

     

    あと、冒頭で菅井きんが一心不乱に「南無妙法蓮華経~」と唱えてるシーンには圧倒されました。

    そして「菅井きんって、昔も不美人だったのか!」という事も子供ながらに衝撃でした。

     

    この作品には六ちゃん以外にも、人には見えないものを見続けている人が出てきます。

    常に、豪華な家を設計して建てる妄想をしている乞食の父親(彼は元は建築関係の仕事していて、

    どこかで心の病気になってしまったのでしょう)や、誰がどう見てもかなりの悪妻である奥さんの、

    良いところを評価し続ける島さんも。

     

    また、現実に存在するものを頑なに見ようとしない人達も出てきます。


    妻の一度の不貞を許せず誰もいないかのように過ごす平さんや、酒屋の小僧が示す愛情に

    向かい合えないかつ子などです。

     

    そして、見えるものも見えないものも全てを見ようとしているのが、貧民街の唯一の人格者、

    たんばさんなんだろうなと思います。

     

    刀を振り回して暴れるキチガイにたんばさんが近付いて、「ちょっと代わろうかね。1人じゃ骨が折れるだろうからね。」と声をかけ、

    キチガイが大人しくなり引っ込む、というシーンは大好きです!


    全てを見ようとしてくれて、理解して包んでくれるようなたんばさんの姿に泣きそうになります。

    私の近くにもいてほしいです。

     

    貧民街が舞台ではあるけど、なんだか、この街の中に世の中の全てがあるような気がするので、未見の方はぜひ見てみてください。

     

    あと、黒澤明の初のカラー作品だそうで、生まれた時からカラーが当たり前の私達からすると

    若干こっちが恥ずかしくなっちゃう程に色を意図的に使用していますので、

    それも見所です。


    ぜひ!!