この映画、観ました?#40「月光の囁き」

    こんにちは。大石ちゃんこです。


    今回は、私が特別に演技が上手だと思っている数少ない俳優の中の1人が主演で、

    内容も非常に面白くて大好きな作品を御紹介。

     

    この映画、観ました?

     

    塩田明彦 監督  「月光の囁き」


    ★★★★☆ 4点

    同じ剣道部に所属し好意を寄せ合う高校生の拓也と紗月は、恋人同士に。


    しかし拓也が彼女にフェチ的な欲望を抱いた事が発覚し、その関係はSM的な様相を呈していく。

    そして先輩の植松も加わった異様な三角関係に…という話。

     

    主演の水橋研二さん、

    演技が素晴らしくて大好きな俳優です。


    初めて今作を観てから現在まで約15年間、常に水橋さんは私の中の「演技が上手い俳優」ベスト3に入っています。

    もしも自分が映像作品を撮影するならば、水橋さんの出演はマストという感じです。


    ドラマや映画や舞台で色んな俳優の演技を見ても、水橋さんほどの方って、なかなか居ません。

    彼はもっともっと評価されるべきだと思います!

    「これは水橋研二以来の若手俳優かも!」と思ったのは、ドラマ『Q10』で池松壮亮さんを知った時くらいでしょうか。

     

    今作『月光の囁き』は、序盤は、拓也が友人から紗月とのキューピッド役を頼まれ、

    しかしそれをきっかけに拓也と紗月が互いの気持ちに気付いてくっつく…という、

    いかにも青春恋愛映画みたいな感じで始まり、甘酸っぱい気持ちで観ることになります。


    田んぼ道での自転車2人乗りシーンなんて、爽やかすぎて眩しいです。

     

    しかし、物語が展開していくにつれ、作品はだんだん違う姿を現していきます。

    私は内容を全く知らずに観たので、驚き、そして魅了されてしまいました。

     

    拓也は紗月と順調に交際しながらも、薄々感づいていた自分の変態性を抑えられなくなり、

    ある日、紗月のトイレを録音。

    それが発覚し、紗月が超激怒して2人は破局します。


    その時はまだ、紗月は拓也の変態的な行為に失望する普通の可愛い女の子だったんです。

    しかし、彼女はその激烈な怒りがきっかけでだんだんサディスティックな癖に目覚めていきます。

    そして、紗月がSな感じになればなる程、拓也は興奮して愛してしまう…という感じに。

     

    人間の奥深くの欲求や、逃れられない性質が現れていく様子、当初は爽やかに結ばれた2人が

    徐々に濃厚な次元で結ばれていく様子などが描かれていて、とても素晴らしいです。

     

    2人の部活が剣道部っていうのも、また、汗臭い感じで良いと思います。

    剣道部の防具とかってめちゃめちゃ臭いんですよね。

    また、凛とした印象のスポーツだからこそ性癖とのギャップが出るし、「面」を付けているのも

    仮面を被っているかのようでピッタリだなと思いました。

     

    マゾヒスティックな拓也は、紗月を愛すれば愛するほど、イコールそれは自分が精神的にも肉体的にも

    傷付く事につながるという、傍から見ると哀しい癖を持っています。

    紗月も、17歳らしい普通の恋がしたいのに、どうしても自分の癖から逃れられなくて苦しみ悩みます。

    2人のその葛藤がとても切なかったです。

     

    そして、作品のラストシーンは、「ああ、2人は運命の人どうしなんだなあ」と、しみじみ思える印象的なものでした。

    ボロボロで包帯だらけの拓也と眼帯をつけた紗月の2ショットには、なぜだかキュンとさせられます。

    同じ高校生男女の恋愛を描いていても、

    年に何本か作られる超ありきたりな相関図と展開の

    少女マンガ実写化映画より、

    何百倍も面白くて観る価値あります!


    また、塩田監督に『黄泉がえり』の

    イメージしかない方は、

    この『月光の囁き』も観てみてください。


    宮崎おあい主演の『害虫』も良いです。

    イメージ変わると思いますよ。


    ぜひ!!