原作:本谷有希子 監督:冨永昌敬 映画 乱暴と待機

こんにちは。大石ちゃんこです。

 

本谷有希子さんが第154回芥川賞を受賞されましたね。彼女の舞台も小説も、とても好きです。

 

芥川賞は過去に3度も候補になっていて、4度目での受賞。

 

軽くM-1グランプリの笑い飯状態だったので、ファンとしても喜ばしいです。

ということで、今回は本谷有希子作品が原作の映画を御紹介。

 

この映画、観ました?

 

本谷有希子 原作

冨永昌敬 監督  「乱暴と待機」

 

★★★★☆ 4点

番上(山田孝之)と妊娠中の妻あずさ(小池栄子)は、引越し先であずさの高校時代の天敵・奈々瀬(美波)と出会う。

 

常にスウェット上下で奇妙な行動を取る奈々瀬は怪しい男・英則(浅野忠信)と兄妹のフリをして同居し、

英則は屋根裏から奈々瀬を覗くことを習慣にしていた。

 

番上が奈々瀬に興味を持った事から、4人の関係は更にいびつになっていき…という話。

 

舞台や小説とは割と設定が変わっています。

 

映画版なのでそれは構わないのですが、原作の、奈々瀬がお笑いを研究してお兄ちゃんのために毎日ネタを披露している

という設定が好きだったので、それが無くなっていたのだけ残念でした。

 

でも、4人の出演者が全員とても上手で良かったです。

 

ぶっとんだ話を成立させる演技力でした。

 

特に奈々瀬役の美波さんは、こんなヤベー女の役をよくやりきったなと思います。

すごいです。そうとう達成感あったでしょうね。なかなか演じられる役柄でもないし。

 

奈々瀬は、とりあえず目の前にいる相手に嫌われないために不器用すぎる行動をとってしまう女で、

相手にイラつかれたくないが故の明るさや

おどおどした感じが逆に相手をイラつかせてしまいます。

 

そして、謙虚に見せかけながらも、メガネ&スウェットがないと自分が魅力的になってしまう

と考えてもいる、微妙に腹が立つ女です。

 

本谷有希子の作品には、男性には見抜けなさそうな嫌な女が出てきて面白いですね。

特に、ちょっとロリっぽい女の抱える闇みたいなのが描かれているのが好きです。

 

また、作品内で出てくる愛や憎しみや嫉妬や常識などが歪みまくってるのも魅力です。

 

終盤のシーンから察すると、奈々瀬は自分が英則から復讐される必要が無い事をわかってたっぽいのですが、

それでも「復讐の対象」としての存在意義が欲しくて奇妙な同居生活を続けていたり。

 

あずさが、番上と幸せに暮らすために彼と奈々瀬の関係に気付かないフリしてたり。

英則は、天井裏から覗く事で奈々瀬の本心みたいなものを覗こうとしてたんだろうけど、

実はそれすら奈々瀬が仕向けた事で、本心はなかなか見せてこなかったり。

 

とにかく歪んでるというか、こじらせてるというか。

そういうのがたまらなく面白いです。

 

終盤の、「最後に、思ってない事でも言うか」と前置きして

それぞれメガネをはずして本音を言い合うシーンは切ない気持ちになりました。

 

嘘だというテイじゃないと気持ちを伝えられない程に感情をこじらせてしまっていて、

二人ともそういう生き方しか出来ないんだろうな、なんて気の毒な二人なんだ、と。

 

そして、ラストシーン。

 

奈々瀬が度無しのメガネをかけるのですが、彼女がカメラからフレームアウトした後の

ピントが合っていない画がとても印象的でした。

 

通常はメガネをかけたらピントが合うはずだけれど、その逆という感じで、奈々瀬の持つ矛盾を表しているようで。

普通の人からしたらピンボケな世界でも、奈々瀬にとってはピントが合っていて、

彼女はそんな生活を選んだという事なのでしょうか。

 

いわゆる普通の恋愛映画では絶対に無いような愛情表現が見られる作品です。

 

実際に自分の周りにこういう人達がいたら距離置きたい感じではありますが、こんな愛もあるんだなと思えて興味深いはずなので、

観てみてください。ぜひ!

 

あとちなみに、同じく本谷有希子原作の映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』も面白くて、

勘違い女を演じる佐藤江梨子さんが最高にイメージ通りで良いので

そちらもオススメです。