井上剛 監督  その街のこども

こんにちは。大石ちゃんこです。

 

今回は、脚本、演出、音楽、役者の演技まで

どれも素晴らしく、全てのスタッフが丁寧な仕事をしているから、だからこんなに心に響くんだなあ、としみじみ思える作品を御紹介。

 

この映画、観ました?

 

井上剛 監督  「その街のこども」

 

★★★★☆  4.5点

阪神・淡路大震災15年特集としてNHKで放送されたドラマに未公開シーンを加えた劇場版。

 

こどもの頃に震災を体験し今は東京で暮らす勇治(森山未來)と美夏(佐藤江梨子)は、追悼のつどい前日に神戸で偶然知り合い、

朝までの時間を共に過ごしながら過去と向き合っていき…という話。

 

監督の井上剛さんは、私はいちテレビ好き視聴者として数少ない信用できるテレビドラマディレクターだと思っています。

お名前を認識せずに見て激ハマリしていたドラマ『はつ恋』も井上さんの演出だったと知った時は、心の底から納得しました。

とにかく丁寧な演出をしているんだろうなと思える方です。

 

彼とよく組んでいる大友良英さんの音楽も最高だし、渡辺あやさんの脚本もすごく高レベルで素晴らしいものでした。

上っ面だけじゃない、心に沁みるセリフで、小手先で人の感情を動かそうとはしていない感じ、骨のある感じが好感持てます。

 

そして森山未來さんと佐藤江梨子さんの演技も自然でステキです。

 

佐藤さんは今出ている昼ドラだとイマイチな演技なので、演出(監督)の役割ってやはり大きいのですね。

 

私にとって阪神・淡路大震災というと、当時は静岡に住む小学生だったのでお恥ずかしながらぼんやりとした記憶しかありません。

2年前に神戸出張の際に行ってみた神戸港震災メモリアルパークで、被災した状態で保存されたメリケン波止場の一部を

見た時は、衝撃的でした。

 

映画のオープニングで、被災当時に子ども達が描いた絵がいくつも出てくるのですが、

実際のむごい映像や画像ではなく子どもの絵で被害の悲惨さを表現するのは、(不謹慎かもしれませんが、)上手だなと思いました。

 

同じ監督のドラマ『あまちゃん』で被災状況を街のジオラマによって表現する演出にも通ずるものがあります。

 

私自身は、震災も、大事故も、大きな病気も、身近な人の理不尽な死も未経験なので、想像でしかないのですが、

勇治や美夏が、神戸を「めっちゃ嫌い」とか、追悼のつどいへの参加を「めっちゃイヤで~」と言ったり、

そしてそれを追悼日の前夜に居酒屋で言っている感じが、とてもリアルなのかもしれません。

 

一番印象に残ったセリフは、美夏が言った「地震はほんまにワケわからへん」というもの。

確かにそうなんだと思います。

 

被災を経験した人は、ずーっと色々考えてきて、考えて考えて、結局、「ワケがわからない」ってなるんでしょうね。

経験していない私には出てこない言葉だなって感じました。

 

地震のことや、そこから生まれた不幸や傷のことを、「忘れるべき」か、「忘れてはいけない」のか、

どっちが正しいのか問題みたいなのってありますよね。

 

メディアが『忘れてはいけない』って叫んでも被災者は『忘れたい』って言っていたり、その全く逆もよく聞くし…。

 

 ひとくくりにしてはいけないかもしれませんが、東日本大震災の被災地の幾つかには

私も6回ほど行った事があり、その中の一つである陸前高田で市役所の職員の方と飲んだ際に言われた、

「忘れる、というのは人間が生きていく為に必要な大切な力なんだと思う。」という言葉がとっても心に残っています。

 

たぶん、どうやって生きていくかは人によって合う方法が違うのでしょうね。

 

劇中で美夏が言ったように「工夫していくしかない」って事なのかもしれません。

 

工夫するのってきっと疲れる事もあるだろうから、そんな時には皆で助け合わないといけないですね。

ずーっと歩いて徐々に心を通わせていく勇治と美夏や、追悼のつどいで集まっていたたくさんの人達を見て、

人を癒せるのは人なんだなと思いました。

 

美夏がずっと避けてきたものと向き合った後のシーンや、追悼のつどいのシーンでは、しばらく涙が止まらなかったのですが、

この感情の高ぶりは、安っすい脚本や押し付けがましい演出だったりで裏が透けて見えるようなドラマ・映画では、

絶対に得られないような心の動きだったと思います。(と言いながらも、私はすぐ泣いてしまうたちなので、

頭とは裏腹にどんなに安っぽい作品でも号泣できてしまうのですが。)

 

とにかく、細かく丁寧に作られているのですごく好感が持てる作品です。テレビ放送された時よりシーンも増えていますので、

ドラマ版は見たという方も、観てみてください。

 

ぜひ!!