こんにちは。大石ちゃんこです。
今回は、一見、登場人物たちを非難したくなるけど、よく考えたら
自分にもブーメランが返ってくる事に気付きゾッとしてしまう作品を御紹介。
この映画、観ました?
ダン・ギルロイ監督 「ナイトクローラー」
★★★★☆ 4点
鉄くず拾いのルイス(ジェイク・ギレンホール)は偶然居合わせた事故現場で、
事件・事故現場を撮影しマスコミに売って稼ぐ報道パパラッチ、通称“ナイトクローラー”と遭遇する。
見様見真似でナイトクローラーになった彼は、視聴率がとれる刺激的な映像を入手する為
その行動をエスカレートさせていく…というストーリー。
正直言って、私自身、下世話なこと大好きで日々、色んな情報や画像を求めてネット徘徊をしており、
何か事件が起きた時も、より早く、テレビでも扱ってない事も知りたい!
と情報を集めまくったりしているので、この作品が描いていることはある種、他人事ではないなと思わされました。
最初、ルイスや同業者が警察の無線を傍受して事件現場に行く様子を見て、
#8でも紹介した映画『24時間4万回の奇跡』の父親を思い出しましたが、
この作品に出てくるのは、あんなかわいいもんじゃありませんでした…。
刺激的な映像を撮って報酬を得て、自分の撮ったものがテレビ放送される興奮にハマっていくルイスは、
「事件発生→駆けつけて撮影」という当たり前の順序をぶち壊してしまいます。
自分が撮りたい映像やストーリーを作り上げるようになってしまうのです。
もはや1ミリもジャーナリズムは存在せず、倫理観がバカになっちゃっています。
ルイスが初めて現場に手を加えるという一線を越えた時のジェイク・ギレンホールの表情が、不気味であり誇らしげであり、印象的でした。
彼の演技を初めて見ましたが、評判通り、素晴らしい演技をするんですね。
彼の他の作品も見てみたくなりました。
狂気じみたルイスを生んでしまったのは、刺激的な画を求める視聴者、視聴率主義のテレビ局、
それらを満たして自分の評価を上げたいディレクターなどでしょう。
女性ディレクター・ニーナの「望ましいのは被害者が郊外に住む白人の富裕層で犯人はマイノリティや貧困層。」
というセリフにはゾッとしましたが、結局、彼女だけでなく、みんな同罪なのです。
また、この作品は、観客がルイスに共感できるように作られています。
観ていて、ルイスを嫌悪しているはずなのに、ルール違反な撮影をしているシーン等で
「急いで!警察がきちゃう!見つかっちゃう!」などと無意識のうちに彼を少し応援している自分がいました。
その感覚が、この映画を面白くしている理由の一つなのだと思います。
あと、作品の趣旨とは少し違う感想になるのですが、バラエティ番組のADだった時代に、
テレビ局の報道ライブラリーから映像を借りる為に報道局の責任者達のところをハンコまわりして
ヒドイ扱いをされるのがとても嫌だったけれど、よく考えてみたら、報道の人からしたら
自分達が足を使って現場で撮ってきた映像を他所が簡単に使うのってムカつくよな~、と気づきました。
(まあ、それと、ヒドイ扱いをする云々は別問題ではありますが…。)
この作品を観たら、普段見ているニュース映像に対して今までに思った事のない感情が芽生えると思います。
また、刺激的な映像を撮る事でしか他者と関われないような、切ない男の話でもあります。
観てみてください! ぜひ!
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