こんにちは。大石ちゃんこです。
今回は、戦争批判と可愛いさとオシャレさって
同居できるんだな、と思った作品を御紹介。
いわゆる反戦映画って、(当たり前ではあるけど)笑いはないし、
重苦しくておしつけがましくて苦手なのですが、こんな反戦映画も成立するんだな、と発見でした。
この映画、観ました?
ジャン=ピエール・ジュネ監督 「ミックマック」
★★★☆☆ 3点
発砲事件に巻き込まれ頭に銃弾が残るバジルは、仕事も家も失ったが、ガラクタ修理屋の
個性的な仲間と出会い新たな人生を歩み始めていた。
そんな中、彼は自分の頭にある銃弾と父の命を奪った地雷の製造会社を見つけ、仲間と共に2つの軍需企業へ復讐のイタズラを企て…
というお話。
この監督といえば、2001年の映画『アメリ』。
公開当時、私にとってサブカル情報源の1つだった大好きな番組『トゥナイト2』で紹介されていて、
静岡での公開を待ちわびた記憶があります。
そして実際に観てみたら、そのオシャレさと可愛さと個性的な世界観に、
田舎に住む20歳の女学生だった私はイチコロでした。
『ミックマック』も、独特で可愛い雰囲気が存分に楽しめます。美術品も味があり、タイニィという発明アーティストが
廃材で作る発明品なんて、いちいち楽しくて可愛いです。
またそれらには、世の中に不必要な物だけど、あれば心が楽しく豊かになるし、きっとどこかには需要があるんだろうな、
という感じがあり、ほっこりした気持ちにもなりました。
映画の始まり方も、かなり粋です。
主人公が劇中で観ている映画の「The End」というテレビ画面がアップになり、そこからこの映画が始まっていくという
オシャレな構成に感心しました。
緊迫感のあるシーンでの、「誰に雇われた?」と聞かれた主人公が「誰にも…。フリーでやってます」
と帽子を取ったりするユーモアも好きでした。
ガラクタ修理屋の仲間達のキャラクターも個性豊かで良いです。
それぞれの性格や特技が、後に実行する作戦に生かされていて楽しめました。
ただ、料理好きなおばちゃんと民族史学者に関してはイマイチ本人の性質が生かされてない気もしますが…。
あと、彼らがやった武器製造会社への復讐作戦は、どう考えても「イタズラ」の域を越えてるし、
死人が出てもおかしくない事もやっているので、観ていて少し疑問を抱いたりもしました。
そういえば『アメリ』でも割と実は犯罪でしょ、っていう事やってましたね。でも、そこはあまり考えずに観れば、
手作り感満載な様々なイタズラは、愛おしく思えてワクワクします。
終盤には、雰囲気が一転して「反戦」感が強くなりビックリ。
武器製造会社の社長2人が最後にかけられたドッキリ的な復讐のオチには、戦争は自分とかけ離れた遠い所で起きていると
思っていてはいけないんだな、と強く思わされました。
あの演出を思いつくのってスゴイです。
でも、ラストのYouTubeのくだりはなんだか萎えてしまい残念でした。
そこも、もっと粋でオシャレだったりクスッと笑えたりする方法で映像が拡散していく展開にしてほしかったです。
とはいっても、作品全体としてはとてもステキなものでした。
#38で紹介した『グランド・ブダペスト・ホテル』もそうですが、
戦争への批判を、可愛くて楽しいものやコメディでコーティングして表現しているのが、品があり好感が持てます。
また、パリで同時多発テロが起きた今、フランスで作られたこの映画を観ることはより深い意味が出てくるはずです。
観てみてください。 ぜひ!
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